■20080504(日)
〜未来の日記〜 [21]
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| 夢を見ていたのでしょうか。 それとも、実在する空間だったのでしょうか。 ぼくとクローバーは、光のトンネルの中を物凄い速さで飛んでいました。 「ねえクローバー、ぼくたちは今、タイムスリップしている途中なのかな?」 ぼくは恍惚とした表情で宙を見つめているクローバーに話しかけました。 しかしクローバーは聞こえているのかいないのか、黙ったまま答えません。 「ねえ、クロー‥」 ぼくがもう一度話しかけようと思ったその時です。 クローバーの全身がピカピカと光り始め、それはやがて光の粒子へと変わり、まるでパラパラと砂が舞うかのように崩れだしたのです。 「クローバー!」 ぼくは叫び、粒子と化して消えて行くクローバーを掴もうと、必死で腕を伸ばしたのですが、この手にクローバーを掴むことはできませんでした。 そしてクローバーは消滅し、光の空間の中にぼくはひとり、取り残されました。 クローバー‥ ぼくはこの数日間、数えきれない程の人と出会い、そのほとんどの人の死を見つめてきましたが、クローバーの死だけは、クローバーが消えてしまうことだけは、ほんとうに切ない気持ちでいっぱいになり、死に鈍感だったぼくの心を、深い悲しみが襲うと共に、涙が溢れて止まらなくなりました。
クローバー‥
ねえクローバー
もう一度ぼくを
抱きしめておくれよ
あの時のようにぎゅっと
強く抱きしめてほしいんだ
ほら、ぼくはこんなに涙を流しているよ
だからクローバー
もう一度ハニーって呼んで
いたずらっぽい笑顔で
ぼくを強く抱きしめておくれよ
クローバー
ねえ、クローバー‥
それからぼくは、どこまでも続く光のトンネルを飛び続け、やがて、深い眠りに落ちました。
第一部、完 | | |