Dr.yamada's Column
■20080504(日)  〜未来の日記〜 [21]
mb_0504070524.jpg 176×144 6K夢を見ていたのでしょうか。
それとも、実在する空間だったのでしょうか。
ぼくとクローバーは、光のトンネルの中を物凄い速さで飛んでいました。
「ねえクローバー、ぼくたちは今、タイムスリップしている途中なのかな?」
ぼくは恍惚とした表情で宙を見つめているクローバーに話しかけました。
しかしクローバーは聞こえているのかいないのか、黙ったまま答えません。
「ねえ、クロー‥」
ぼくがもう一度話しかけようと思ったその時です。
クローバーの全身がピカピカと光り始め、それはやがて光の粒子へと変わり、まるでパラパラと砂が舞うかのように崩れだしたのです。
「クローバー!」
ぼくは叫び、粒子と化して消えて行くクローバーを掴もうと、必死で腕を伸ばしたのですが、この手にクローバーを掴むことはできませんでした。
そしてクローバーは消滅し、光の空間の中にぼくはひとり、取り残されました。
クローバー‥
ぼくはこの数日間、数えきれない程の人と出会い、そのほとんどの人の死を見つめてきましたが、クローバーの死だけは、クローバーが消えてしまうことだけは、ほんとうに切ない気持ちでいっぱいになり、死に鈍感だったぼくの心を、深い悲しみが襲うと共に、涙が溢れて止まらなくなりました。

クローバー‥

ねえクローバー

もう一度ぼくを

抱きしめておくれよ

あの時のようにぎゅっと

強く抱きしめてほしいんだ

ほら、ぼくはこんなに涙を流しているよ

だからクローバー

もう一度ハニーって呼んで

いたずらっぽい笑顔で

ぼくを強く抱きしめておくれよ

クローバー

ねえ、クローバー‥

それからぼくは、どこまでも続く光のトンネルを飛び続け、やがて、深い眠りに落ちました。


第一部、完

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