日記

Dr.yamada's Column

■20061030（月）　路上の哲学者

何十年も陽の光に焼かれた肌は年期の入ったコンクリートのように深く、頬いっぱいに生えた髭は狼のように銀色で、汗と埃が蓄積されたシャツは元の色がわからないくらいに真っ黒である。
そして錆ついた乳母車をカタカタと押して歩くその姿はけして微笑ましくはなく、誰が見ても一目でわかるその風貌はホームレスの何者でもない。
察するに彼の年齢は五十代半ばか六十代の初老、近くに寄ってまじまじと見たわけではないがたぶんそのくらいの歳だと思う。
いったいどこから来てどこに行きそしてどこに帰って行くのかはまったくの謎だが、とにかく毎日決まった時間になると現場の前を通り過ぎて行く。
その老人を毎日観察しているうちに彼には３パターンの歩行の仕方があることに気がついた。
①乳母車をカタカタと押して歩く。
②小さな本を持って読みながら歩く。
③なにも持たずにぶらぶら歩く。
以外なことに一番特徴的なのは③の手ぶらで歩く時なのだが、なぜなら手ぶらで歩いている時には決まってなにかぶつぶつとしゃべっているのである。
それもかなり大きな声で。
おれはいったいなにをしゃべっているのだろうと思い、手ぶらで歩行している時には注意深く耳をそばだてるのだが、今だに一語たりとも単語を聞き取れた試しがない。
しかししゃべっている言葉のフィーリングからして日本語であることに間違いはないはずだ。
とまあ、なにかと存在感のある彼だから当然現場でも噂にはなる。
その話の中身と言えば彼はどこどこの社長だったとかどこどこの大学の教授だったとか果ては日本政府の工作員でどこどこに潜入していたのだがバレて脳を破壊されて帰って来ただとか、とまあ、そんな内容だ。
しかし彼がホームレスになる前にはいったいどういった人物だったかと言う想像がなぜか知的な人物を連想させるのはどうしてだろう。
やはり、険しい顔つきで本を読み、時に何事かぶつぶつと言って歩くからだろうか‥
そんなことを考えているうちにおれには彼が偉大なる哲学者の経歴を持つ人物ではないかと思えてしょうがなくなってきた。
路上で哲学をする老人。
路上で哲学‥
はっ！‥もしや彼はジャックケルアックの生まれかわりか！？
いや、日本人だけに阿佐田哲也の方か！？
でも生まれかわるには彼は歳を取りすぎている。
じゃあいったい‥
あ、そうか！
読んでる本がケルアックや阿佐田哲也だったりして！‥
だとしたらおれは友達になれる。
いや無理か‥
路上にも出てないおれが路上の哲学を彼と語らうなんてこっちがよくてもむこうにいやだって言われるよな‥
おれ、まだまだだな‥
でも、まだまだでもいいかもな‥
こればっかりは‥
と、こんな話しはさておき昨日は富士アニマルハウスでライヴだった。
この日はダチバンドのアウトランと富士の２バンドとのブッキング。
やはりホームであるアニマルはやりやすい。
ライヴの後は来てくれたダチロッカーと楽しい打ち上げ。
みんな遅くまでおつかれでした。
さて、次回のライヴは１１／１１静岡サナッシュ、対バンにはなんと原爆オナニーズ！
本物のパンクバンドを見たい人は来るしかないでしょう！
題して、
「本物のパンクロックを聞いて身も心もつるんつるんになろう！！(ロックには浄化作用があるのだ)」
に乞う御期待！

■20061025（水）　さよならビーン‥

沈黙戦隊ビーンは数多くの謎を残したまま現場を去って行った。
結局、おれにわかったことは彼は青空だということだけだった。
そして今、心の癒し所を失ったおれは現場でひとり、密かに癒し系を探す日々を送っている。
毎日毎日いろいろな人を観察する。
しかし、聞こえてくるのはブルースばかり。
それもそのはず、こういった建設現場に集まる人達なんて所詮社会の末端で喘いでいる下層階級の労働者。
吹き溜まりに溜まる落ち葉の如く、どこからともなく無数に集まって来た人達なのだ。
ま、おれもそのひとり。
今日も仲良く不精髭の裏ぶれたおじさんたちと肩を並べて心のこもったブルースをうたうのだ。
しかしおれは思う。
ロッカーでもないのによくこのブルースの嵐に耐えられるな、と。
そして思い直す。
もしかしたらこの人達こそ本物のロッカーではないのか、と。
いやまてよ、ロッカーと言うからにはロックでなければならないのだがロックかと言われればロックではないか、と。
いやそれよりなによりそもそもロックとはいったいなんなのか、と。
か、と‥。
っと‥。
と‥
と‥
と‥。
土曜はライヴだった。
レジオン企画、
「ＳｅｅｋｉｎｇｆｏｒｌｅｔｈａｌｄｏｅｓｏｆｍｕｓｉｃＶｏｌ，１」
に出演。
初対バンのバンドも多く、新鮮で楽しい一日になった。
ありがとうレジオン。
またお願いします。
次回のライヴは今週日曜富士アニマルハウス。
ブルースをけっとばせ！
に乞うご期待！

■20061015（日）　ロックの行方

あれから１１１１１ｋｍ。
またもやミーのカーは横並びにラッキーな数字を刻んだ。
今日は出る。
出るに決まっている。
今日のこの日に行かなくていったいいつ行くと言うのだ。
と言うわけでおれはコンコルドへ向かった。
いや、向かおうとした。
向かおうとして思い留まった。
なぜならおれにはカネが無い。
いや、まったく無いわけじゃないけど軍資金と呼べるほどのカネはない。
う～ん、困った。
１１１１１ｋｍぶりの大チャンスなのに‥
う～ん‥困っ‥
うん？困‥らない？
だって出るんじゃん。
出るんだったら困ることないじゃん。
困ることないなら行けばいいじゃん。
行っちゃえ行っちゃえ。
ユー、行っちゃいなよ！
って、しかし軍資金の手持ちがない。
鉄砲で行ったところで麻雀じゃないから打つことができないし。
こんな時、人はどうするのだろう。
①あきらめる
②借りる
③盗む
これが列車なら選んだ切符の行き先は以下の通り。
①普通列車－明日行き
②欲望列車－地獄行き
③犯罪列車－監獄行き
ふむふむ。
さて、どの切符を買おうかな‥
①の列車は普通だけど間違いないな。
②の列車は魅力的だけど危ないな。
③の列車はロックじゃないから却下。
となると①番か②番。
正解はどっちだ？
それはもちろんロックな視点での正解として。
ロックな正解は‥
ロックな正解‥
ロックに正解‥
ロックと正解‥
正しいロック‥
え？正しいロック？
ロックに間違いや正しさがあるのか？
そもそもロックとはいったいなんなんだ‥
ロック‥
ロックロックロック‥
う～ん‥
ロックとはいったい‥

と、オチに困った時はこれに限る。
フフ‥
ってことで苦悩は続く‥

■20061010（火）　アニマル・ザ・ブルース

日曜は動物園に行った。
檻や柵に囲まれた動物は、逃げることを忘れ、故郷の風景を忘れ、自分の身体能力すら忘れて、只々、居眠りをして毎日を過ごしている。
それがかわいそうだな、とは思うが、致し方ないかな、とも思う。
なぜなら、世の中すべて需要と供給で成り立っているのだから。
その需要側であるおれが動物園に来て、動物の憂欝に思いを馳せたところで、動物園のなにがかわるわけでもなく、ダチョウが空を飛んで逃げて行くわけでもない。
だがしかし、おれがロッカーである限り、こんな行楽地へ来てまでも、考えなければならないことがある。
それは動物の憂欝‥
アニマル・ザ・ブルース‥
動物園の門をくぐり、動物のブルースに耳を傾け、そうして一周してまた門を出て行く頃には、おれはまたひとつ、ロッカーとして成長しているのである。
なぜなら、ブルースはロックの原動力なのだから。
しかし、なぜブルースがロックの原動力になるのだと、おれに聞かれても困るのだ。
それを口で説明するのは難しい。
もしも説明するのなら、まずはロックとはいったいなんなのかと言うところから話しを始めなければならず、しかしロックとはいったいなんなのかって、それはおれが一番知りたいことであり、この話しになると決まって思考の迷宮に迷いこむのである。
ロックとはいったい‥
う～ん‥
ロックとはいったい‥
と。

■20061003（火）　清水JAMJAMJAM

なんて無口なんだ‥。
おれがビーンを観察しだしてからこの数週間、なにかとそばによっては聞き耳を立ててみるのだが、今だ彼のしゃべる声を聞いたことがない。
これじゃまるでゴリラーマンだ‥。
休憩中一人黙ってタバコを吹かすその横顔が、だんだんゴリラーマンに見えてくる。
いや、ビーンだってしゃべらないキャラだからビーンはビーンでいいじゃないか、だってほら、姿形はまるっきりビーンなのだから。
と、危うく彼をゴリラーマンに仕立て上げそうになったおれは首を振って邪念を払った。
そしてまたじっと彼を見つめた。
ビーン‥
いったい何を考えているんだ‥
ビーン‥
その澄んだ瞳の奥にはいったい何が潜んでいるというのだ‥
ビーン‥
ビーン‥と、ふと気がつけばいつの間にかビーンもこちらを見つめていた。
あわてたおれは咄嗟に目を反らし、頃を見計らってまたビーンに視線を戻した。
しかし、まだビーンはこちらをじっと見つめている。
おれは目を反らさず真っすぐにビーンを見つめ返した。
そしてしばらくおれたちは見つめ合った。
やがておれは悟った。
彼の奥には何もない。
彼にはただ、青空が広がっているだけ。
そうだ、彼は青空なんだ。
青空のビーン‥。

青空ビーン‥。
あ、語呂いいな‥。
と、ますます深まるビーンの謎に、苦悩は続く‥。

で、この日記が終わるわけにはいかない。
なぜなら先週土曜はライヴがあったのだ。
この日はアウトランとレジオンの合同企画、「BRING THE NOISE!!」Vol.1。
出演バンドは８バンド。
１バンド目から客入りも上々でだんだんと盛り上がっていくとそれは最後まで続き、満客に白熱したこの日のイベントは大成功に終わった。
打ち上げもかなり盛り上がって飲みすぎたおれは記憶を喪失。
迷惑をかけた人や不快な思いをさせてしまった人、ごめんなさい。
それとアウトラン、レジオン、企画に誘ってくれてありがとう。
これからもよろしくロック！

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