日記

Dr.yamada's Column

■20060330（木）　夢の教示

うちの会社のいばりんぼは現場のあまりの忙しさに自分の息子を連れて来た。
聞けばその子は十六才、内気で無口なかわいい少年でいばりんぼの父親とは顔も性格もまるで正反対。
おれは少年に今、春休み？と聞くと少年は学校は嫌いだから行ってないんだと言う。そっかじゃバイトかなんかやってるの？と聞くと普段は家でパソコンとテレビと読書をして過ごしていると言う。そっかじゃひきこもりかな？と聞くとうんぼくヒッキーだよと言った。
おれはこれはいかんと思いこのヒッキーの少年にコンコル道を説いてあげようと思った。
いいかい少年、本を読みなさい‥あ、本は好きか、じゃ新聞は‥毎日読んでる？えらいなあ‥じゃ勉強は‥え？塾に通ってる？学校行かないのに？へえ～学歴なくても学力で劣るのは嫌か‥じゃタバコは？吸わないのね、えっと援交‥にはならないか若いしね、じゃあ野菜は？好き？そっか‥う～ん‥おれは言葉に詰まった。そして悟った。
この少年はすでにコンコル道を歩んでいる。
しかし前向きなヒッキーだねと言うともうヒッキーはやめるんだと少年は言った。じゃあなんになるの？と聞くとそれはこれから探していくんだと言うからおれはロッカーなんてどお？て聞くとロッカーってなに？て聞くからロッカーとはつまりロックに生きてる人のことであってロックとはつまりその‥おれはまた言葉に詰まった。なぜならおれはまだロックとはいったいなんなのか解明できていなかったのだ。そこでおれは逆に聞いてみた。
ロックってなんだと思う？すると少年は言った。
ロックとはコンコル道成り！
そう言った少年の髪はみるみるうちに白髪になり眼鏡をかけるとコンコル道を説いてまわるおじさんの顔になった。
そこでおれは夢から覚めた。
夢か‥しかしロックとはコンコル道成り‥か、う～ん、ちがうよな‥ロック‥ロックとはいったい‥深まる謎に苦悩は続く。

■20060324（金）　全治一週間

ズキン‥
あ痛っ！
オーマイファック！
電動工具で指を切ってしまった！
手袋の中で薬指の先っちょがズキズキと脈を打っている！
あ！血が滲んできた！あゎゎゎ、こりゃたいへんだ！
恐くて見る気がしない！
でも見る？見ない？見るしかねえかやっぱ‥
と、恐る恐る手袋を外したおれはあまりの裂傷に驚愕して失神しそうになった。
と、言うのは嘘でほっとして安堵の溜息を漏らした。
なぜならその指の傷は予想より遥かに軽かったのだ。
しかし半径３㎜程、厚さ１㎜分の指の皮はおれの手を離れてどこかに行ってしまった。
あ～あ‥としばらく丸い傷を眺めた後、おれに怪我を負わせた憎き電動工具に壊れない程度の打撃を与えたおれは絆創膏を貼りに車へと戻った。
現場から車までは徒歩三分、開いている店よりシャッターの下りている店のほうが多い寂れた商店街を車目指してのろのろと歩く。
思えばこの現場に来てからはろくなことがない。
脚立から足を滑らせ脛を強打したりペンキが垂れて髪の毛がねずみ色に汚れたり溶接の煙を吸って高熱でうんうんうなったりにがみばしりのいばりんぼ上司ににらみをきかされたり流れの悪い便所はいつも詰まっていてうんちが山盛りでほったらかしだから思うように用が足せずに今ではすっかり便秘になってしまったりその結果唇が荒れてひりひりしたりとまったくもってほんとにいいことがなくて最近すっかり忘れかけていたブルースが徐々に蓄積されてくるのだがブルースはおれの原動力でありロックの魂であるからしてそれはそれでロッカーにはとてもいい貯蓄だからこれでいいのだ。
と思いつつも見上げた空にそっと呟く。
あぁ‥ロックとはいったい‥。

■20060314（火）　サナッシュライヴ

冬と春が混在する三月の中旬、この日は前日程暖かくもなく、かと言って一昨日程寒くもなく、となると春物ファッションで行くべきか冬物ファッションで行くべきか微妙に悩みつつも悩む程服も持っていないことに気ずいたおれは結局いつもの格好で家を出た。
そしてメンバーに合流してメンバーを見るとみんなもいつもの格好だったからもう少し春っぽい服はなかったわけ？と言ってあげるとおまえに言われたくないとか言い返されいつもどおり仲良く悪口を言い合いながら静岡へ向けて出発。
この日のリハ入りは二時三十分、がいつもの如くちょっぴり遅刻したおれたちは腰も低めに会場入り。
どうもどうもと挨拶をしているうちにリハが始まりリハを終えたおれたちはいつものように街をぶらつく。
今日はどこでなにをして時間をつぶそうか‥と、あてもなくぶらぶらしているとビール半額の看板を発見。
外から店を覗くかぎりではその広告に嘘偽りはなさそうだ。
入るかどうしようか‥。
なにしろ去年浜松でとんでもないぼったくりにあったおれたちは知らない店に入る時にはつい慎重になってしまうのだ。
しかし洋風の外観といい客の多さといいこの店でぼったくりはないら？と話し合った末、とりあえず店に入るとテーブルに座って店員を待った。
そして注文を取りに来たウエイトレスにおれたちは念を押して聞いた。
「ビール半額ってほんとですか？」
ウエイトレスはそうにちがいありませんと一言で答えるとフードの注文を促した。
しかしトラウマが脳裏をよぎるおれたちは更に食い下がった。
「あのう、一杯千円だったり‥しないよね？」
ウエイトレスはそんなおれたちに子供でもわかるようにゆっくりと丁寧に答えた。
「いいですかみなさん、ビールは一杯四百八十円のところを今日は半分の値段で二百四十円になります。え？ええはい、何杯でもその値段です。え？フフフ、大丈夫、大きさも普通の中ジョッキになりますよ。ではみなさん他に質問はございませんか？」
他に聞くことが思いつかないおれたちはビールとつまみを注文した。
それから二時間、調子にのってビールをたくさん飲んでしまったおれたちはフラフラになりながらライヴハウスに戻った。
店に戻ると十分押しでライヴは始まった。
この日は８バンド出演でおれたちは６番目、きっとその頃には酔いも覚めるだろうと思っていたのは甘い甘い考えだったことに気ずいたのは出番も直前、後悔先に立たずでおれたちはステージに上がった。
結果は如何に？
そして次のバンドが終わり最後のバンドであるこの日のイベントの主催、アンプペッツがライヴを終えるとこの日のライヴは終了した。
今回このアンプペッツ企画に誘ってもらったのはこれで二回目だが前回同様お客さんの入りもよく出るバンドも素晴らしく最初から最後までとてもとてもとっても楽しい一日になった。
ありがとうアンプペッツ、また誘ってくり。
その後は待ってましたの打ち上げで時間も忘れて酒を飲むと翌日仕事にひびいたのは言うまでもなく、それでも楽しかったからまあいっかと言うわけで次回のライヴは四月一日静岡スパイラルマーケット、キャメルはここは初ライヴだけに胸踊る。
ちなみにスパイラルは静岡街中で映画館も近いので例の映画を見にきた人は帰りにライヴも見て帰ってください。
それではみなさんごきげんよう、さようなら。

■20060309（木）　日曜どうでしょう

日曜日は映画館へ映画を見に行った。
その映画のあらすじはこうだ。
少女が兄弟とかくれんぼをして洋服タンスへと隠れた。するとそのタンスは別の世界へとつながっていた。
びっくりした少女は兄弟にその事を伝え、兄弟みんなで冒険をすることにした。
驚くことにその世界ではすべての動物が人間と同じように言葉を話した。
だが、なぜかすべての動物は腰痛を患っていた。
話しを聞けばこの国を支配している悪い魔女にぎっくり腰の呪文をかけられ、刃向かおうにも腰が痛くて戦うことができないのだそうだ。
そこで心優しい少女とその兄弟は腰痛で苦しむ動物達を救うべく、魔女との戦いを決意したのだった。
この映画の題名はズバリ、「ヘルニア国物語」。
とても面白い映画なので見てない人は映画館へ急ぎましょう。
で、映画を見終わった帰り道、ついでにライヴも見て帰ればより一層充実した一日になるでしょう。
例えば１２日あたり、サナッシュで‥。

■20060301（水）　平和と秩序とコンコル道

ファミレスで一人、食事をすませた中年は、会計をしようとレジに立った。
しかし、昼時で忙しい店内の従業員は、レジで会計を待つ中年の存在に、誰一人として気がつかない。
苛立った中年は、レジにある呼び鈴を押した。
が、やはり、呼び鈴の音に気がつく従業員は見当たらない。
頭にきた中年は何度も何度も呼び鈴を押す。
しかしやはり、従業員は見向きもしない。
しばし立ち尽くした中年は、やがてくるりと向きを変えると、出口に向かって歩きだした。
そして最初のドアをくぐり、最後のドアに手をかけた瞬間、突如として声をかけられた。
「お客さま、お会計がまだのようですが‥」
振り向くと若い女性従業員が緊張した面持ちでこちらを伺っている。
中年は待たされた怒りと食い逃げの気恥ずかしさに声を荒げた。
「おれは払うつもりでずっと待っていたんだよ！呼び鈴だって何度も押したのに誰も来やがらねえ！それはおれに払うなって言っているのと一緒だろうが！だいたい客が出て行こうとしなけりゃ勘定をしねえってのがおかしいだろう、それが客を扱う態度か！」
怒り爆発の中年に絶句したまま固まっている従業員、それを見た気弱な店長はまず、警察に一報してから二人の傍へかけ寄った。
「あのう、お客さま、お待たせしましたのは大変失礼いたしまして、本当にあいすいません。しかしですね、お会計を済ませて頂かないことにはこちらとしても困るわけでして‥」
冷や汗をだらだらと垂れ流す店長を前に、中年の怒りは治まるどころか更に加速した。
「やい貴様！払え払えってじゃあ待たされたおれの気持ちはどうなるんだよ！おれの時間はどうなるんだよ！だいたい時は金なりって言うだろ！無駄に待たされたおれの気持ちと時間の勘定をおまえ払うことができるのか！えぇっ！」
と、ついにやくざなセリフを吐き始めた中年。
おろおろする店長。
そこへ駆けつけた警官三人はとりあえず中年を包囲した。
しかし、後には引けなくなった中年は、警官相手にひるむことなく噛みついた。
しかし相手は国家の犬、下層階級のボンクラ犬がどれほど怒り狂おうが所詮は敵う相手ではない。
やがてがんばっていた中年も国家権力の名の元にひれ伏した。
おれはそれを見届けるとくるりと回れ右して現場へと戻った。
戻る途中、おれは思った。
今度ああいうおじさんを見かけたらおれが正しい道を説いてやろう。
「無銭飲食はいかん！コンコル道行く者当然なり！」
と。
めでたしめでたし。

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